警察の銃器.2(特殊銃編)




警察の装備 航空機編


警察の銃器.2(特殊銃編)




■ 公開日 2013/05/09 15:24:51  
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一般警察官では扱うことの許されない特殊銃とはなにか!


我々が街で遭遇する警察官の多くは地域部や交通部の警察官でしょう。彼らの携行する短銃はほぼすべて回転式のオーソドックスなモデルです。しかし、機動隊や特殊部隊になると、けん銃どころかサブマシンガンや自動小銃など何でもあり。これらを扱うには一般の警察官では許されず、特別に訓練を受け指定をされた警察官のみ。そして彼ら特別な存在だけが扱うこれらの長物を「特殊銃」と呼びます。それでは、各種の特殊銃ごとに紐解いていきましょう。


特殊銃その1、機関けん銃「ヘッケラー&コッホ MP5」


2002年5月10日、サッカーワールドカップを控え、警察庁は警視庁特殊急襲部隊SATの訓練映像を初公開しました。このときにSAT隊員が携行していたのが、世界中の法執行機関で愛用される特殊戦術用火器として有名な、MP5サブマシンガンでした。同モデルは警察向けの短機関銃の最高傑作とされ、とくに西側やアメリカの同盟国の軍や警察機関でベストセラーになっています。軽くて伸縮式(固定式もあります)ストックを装備したMP5は警察の介入する立てこもりや軽度テロ事案に最も適した高性能の9ミリ口径、30連発の短機関銃です。現在、日本では都道府県警察の機動隊/SATなどにMP5AやMP5Fなど、複数のバリエーションのモデルが配備されています。ハリウッド映画・日本のアニメ、昨今の警察系ドラマでの露出はナンバーワンと言えるでしょう。日本では、1993年に放映された少女向けテレビアニメにMP5A2(固定ストック)が早々と登場。気が付けば、全国の警察本部の機動隊に編成されている銃器対策部隊、8都道県警察のSATのほか、皇宮警察海上保安庁海上自衛隊特殊部隊までもがMP5を配備し、日本でもMP5は法執行機関や軍事組織のスタンダードなアイテムとなりました。とはいえ、現状では、原発の警備を行う部隊でも"むき身"でMP5を携行したりはせず、普段は大事に仕舞ってあるようです。しかし、2015年にはISIL、いわゆるイスラム国から、何にも嫌な事してないのに日本国および日本人に対する宣戦布告が出され、日本国内の治安情勢もより一層緊迫が増しており、警察の警備も強化されていますから、場合によってはMP5を携行した警察官の姿を街中でも見かけるようになるかもしれません。日本人の大部分はヘーワ好きで兵器アレルギーですから、日本の警察官が短機関銃を抱える姿には抵抗を抱く人も多くいそうです。お金持ちの日本警察では、MP5にも光学式照準器、いわゆるダットサイトが装備されています。警視庁SATではEOテック社製のレーザーホログラムサイトというすごい高いダットサイトが装着されています。


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「MP5-J」じゃないんですか?

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MP5-Jは東京マルイの玩具の商品名であり、H&K社の製品名ではありませんので注意が必要です。ただ、警察の公開訓練では模擬銃として東京マルイ製のMP5-Jが使われたこともありますから、「警察がMP5-Jを使っている」というのはあながち、間違いじゃないのかもしれません。なお、M3913の模擬としてウェスタンアームズの40TSWも使用しています。


「機関けん銃」という苦肉の呼び名と各モデル


日本の警察ではMP5を短機関銃と呼ばず「機関けん銃」と呼称し、特殊銃という区分にカテゴライズしています。「機関けん銃」とは何のことは無い、ただの短機関銃ですが、日本の警察と自衛隊が短機関銃を本来の名称で呼ばずに「機関けん銃」という変な呼称にこだわるのは「マシンピストル」をそのまんま日本語にしたというマヌケな理由ではありません。なお、バリエーションは意外と豊富で、SAT隊員に死亡者が出た長久手町立てこもり事件では、フォアグリップの付いたMP5も配備されていたことが明らかになっています。一方、MP5は主に警備部の機動隊の装備ですが、警視庁では刑事部である捜査一課特殊班SITにも単発モデルのMP5を配備しています。SATマガジンというミリオタ雑誌では本銃をMP5SFKと呼称しています。シングルファイヤなのでこちらの短機関銃カテゴリーで紹介するのは何かしっくりこないんですが・・・。2013年5月13日に放映された刑事ドラマ「確証〜警視庁捜査3課」ではSATとSITの確執を描いていましたが、ドラマ中にわざわざSITとSATの説明文を入れるというありえないドラマでした。2ちゃんねると、その派生サイト(ニコニコ動画)でSATの動きが生中継され、ネット住民の妨害に警察が踊らされたり、途中でどこかのオバサンが作戦指揮室へおはぎを差し入れに入ってくるという、ギャグなのか本気なのかわけがわからないドラマでした。そのせいで黒尽くめのSAT隊員の姿ももはやギャグにしか見えず、ニート警備隊にしか見えなくなりました。両者の銃器の違いくらいきちんと考証を行ってほしいものですね。また、映像で公開されていないMP5もあります。『警視庁・特殊部隊の真実』(著者伊藤鋼一、大日本絵画、2004年)に記載された情報によれば、サイレンサーが標準搭載されたMP5SD6や、限界まで銃身を切り詰めてストックも廃止したMP5Kも配備されていたそうです。それにしても警察が配備しているMP5っていろんな種類があるんだね。

「取り出し」、「連射への設定変更」、「使用」などは指揮官の許可が必要


通常、SATではMP5の安全装置であるセレクターレバーをセーフモードにして安全に管理しているのですが、作戦遂行中であっても、連射モードにはされておらず、単発モードになっています。隊員の個人判断で連射にレバーを切り替えることは許されておらず、状況がひっ迫して命令・指示を受けられない場合を除いては指揮官の許可が必要になっています。平時にもし勝手にフルに切り替えたら、怖いパイセンからあとでヤキが入るのかな・・・。安全装置と言えば、MP5の暴発事故が全国の警察で発生しています。玄海原発で警戒任務に就いていた機動隊員が暴発させたり、大阪府警でも機動隊員が自らの足をMP5で撃ち抜いたほか、2004年には皇宮警察もMP5を誤射させています。

射撃訓練中に機関拳銃が暴発、特殊部隊員重傷 大阪府警
2006年08月22日22時53分

22日午後2時35分ごろ、大阪府大東市龍間の大阪府警総合訓練センターの射撃場で、射撃訓練中の府警警備課特殊部隊(SAT)の巡査部長(28)が過って機関拳銃を発射し、弾が左足のふくらはぎを貫通して1カ月の重傷を負った。周囲では当時、巡査部長以外に4人の隊員が訓練中だったが、けがはなかった。SATはテロ対策などに当たる特殊チームで、暴発事故は府警では初めて。

引用元
http://www.asahi.com/national/update/0822/OSK200608220117.html


HK Slapって?


映画でMP5が登場する作品は多くあります。ダイ・ハードやエトセトラ(多すぎてきりがない)。弾丸を装てんする際にコッキングハンドルをひっぱたいて、少々手荒に前進させるシーンが良くあります。この動作をHK Slapと呼びます。HKSlapはMP5のもはや「お約束」シーンですが、実際、そのように勢いよくボルト前進させないと弾丸がうまく薬室に入ってくれないのだそうです。これを東京マルイでやるとハンドルが根元から折れます。

特殊銃その2、狙撃銃 高性能な害獣駆除用ライフルで被疑者を駆除

日本警察における狙撃手は、機動隊の原子力施設警戒隊といった各部隊や、SATの中に配属されています。警察の狙撃手といえば、1970年のぷりんす号ハイジャック(シージャック)事件において出動し、犯人を射殺後、弁護士から殺人罪で告発されたことでも話題になりました。この事件はライフル銃を所持した20歳の犯人が船をのっとり、マスコミや警察のhelicopterにまで狙撃したり、警備艇に銃撃するなど大変に凶悪なものでした。海上自衛隊の艦艇まで警察の要請で派遣され、自衛艦に警察官が搭乗してハイジャックされた船を追跡するという事態になりました。結局、被疑者は警察庁の命令により大阪府警の狙撃手によって射殺されましたが、その警察の狙撃において狙撃手が使用した銃が、単発式のボルトアクションライフル「豊和ゴールデンベア」です。現在の都道府県警察が配備している狙撃銃には複数の種類があり、ボルトアクション式の単発ライフルからセミ・オートの超高級半自動式ライフルなどがあります。主に下記の4つのタイプが配備されています。


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警察が配備する狙撃銃その1「豊和M1500」


ホーワ(豊和工業)M1500は、前述した同社のゴールデンベアというモデルをフルモデルチェンジした高性能の民生用ライフルです。現在、警察ではM1500シリーズの中でもバーミンター仕様という銃身が太くなったヘビーバレルモデルを、SATや銃器対策部隊などで配備しています。ウェザビーMk5ライフルを参考として製造されたオーソドックスなボルト・アクション式のライフル銃である同製品は、日本国内はもとより外国でも高い人気があります。なお、警察部内での制式名称は「特殊銃I型」となっています。


警察が配備する狙撃銃その2「PSG-1」

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軍事専門誌『SATマガジン』2009年1月号に掲載された記事「日本警察の拳銃」によれば、警視庁特殊部隊SATでは自動式狙撃銃であるヘッケラー&コッホ社製のPSG-1を使用しているとされます。しかし、公開訓練では未だバラされていません。PSG-1はセミオート方式を持った高性能の自動式狙撃銃で、撃つたびに自動で次弾が装填されるため、一発ごとに装填のための操作が必要なボルトアクションライフルに比べ、素早く目標に連続射撃が可能です。精度も高く、また価格も大変高価です。そのため、世界では買いたくても予算が無くて買えない警察や軍隊があり、それでも欲しいという場合には廉価版のモデルでお茶を濁しているようです。
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警察が配備する狙撃銃その3「L96A1」


こちらも前述の『SATマガジン』2009年1月号に掲載された記事「日本警察の拳銃」による情報ですが、警視庁SATで配備されているようです。アキュラシーインターナショナル L96A1はイギリス軍が配備するボルトアクション式精密狙撃ライフルで米軍も使用しています。東京マルイ製L96が日本の中学生たちにも大人気です。


警察が配備する狙撃銃その4「対物狙撃銃」


前述した三つのモデルについては、いわゆる「対人狙撃銃」と呼ばれる銃でした。この対人狙撃銃以外にも日本警察では対物狙撃銃(アンチ・マテリアル・ライフル)としてイギリス製の対戦車ライフルまで配備されていると一部で指摘されています。こちらは日本特装という企業が自社のカタログで「アキュラシー・インターナショナル製品の対物ライフルAW50を警察に納入した」とバラしたことで発覚したそうです。一般に、対物狙撃銃(対戦車ライフル)は、戦車や装甲車などの装甲車両を攻撃するための兵器で、弾丸は重機関銃に使用される12.7ミリや、戦闘機の機関砲にも使用される20ミリ口径といった大口径を使用しています。このような弾丸は強烈に殺傷能力が強く、かすっただけでも腕や足、頭部などは破断しますし、直撃などすれば、赤い霧になってしまいます。ロケット弾などの破裂系の武器が使えない日本警察の最終兵器といっても良いかもしれません。ただ、警察の特殊部隊にこのような対物狙撃銃が配備される理由は、航空機に対するハイジャック対策などが主であり、航空機のコックピットのキャノピーを貫通させるだけのエネルギーを持った対物狙撃銃は世界各国の特殊部隊でも重宝されています。

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特殊銃その3、自動小銃・・・・新たに銃器対策部隊へも小銃を配備へ。

とまあ、このようにイマドキの日本警察の武装は短銃だけではない。狙撃銃やサブマシンガンなどズラリ配備されているということがわかったね。そして、自動小銃までも配備しているのだ。ただ、これまで日本警察による自動小銃の配備は、特殊部隊SATのみに限定されていた。しかし、2015年12月18日、警察庁はパリのテロ事件などを受け日本国内でもテロの危険性が高まっているとして都道府県警察機動隊の中に編成されている銃器対策部隊、とくに都市部の部隊へ自動小銃を配備することを決定したと発表した 。重武装のテロリストによる同時多発的なテロが起きた際、少数しか編成されていないSATが現場まで駆けつけるまでの繋ぎとして、銃器対策部隊が対応できるようにするためとのことだ。現在、SAT隊員は全国の警察本部をあわせると300名程度。対して銃器対策部隊はそれを上回る2000人規模だ。銃対のメインアームズもSATと同じくMP5(けん銃と同じ9ミリ弾を使用)だが、今回の自動小銃配備によりさらに強力な戦闘力を持つことになるだろう。ただ、自動小銃は現在SATが使用する89式なのか、それ以外のモデルを新たに調達するのかはわかっていない。89式小銃の自衛隊への納入価格は調達数にもよって変動するが、約25万円前後と言われている。全米各地の警察機関の多くでもいつのまにか、MP5から米軍の軍用小銃M4に更新されつつある。犯罪者側の防弾化により、9ミリ口径のMP5では対処が困難になっている現状も理由だろう。陸上自衛隊でもすでにM4カービンを米国からFMSで調達している。が、自国産業の保護と、89式小銃の「日本人の体格に合わせて開発された」という観点から日本警察がM4を調達する可能性は低いのではないだろうか。警察用としては威力の強すぎる64式とも思えない。

特殊部隊SATが配備する自動小銃・・・・その1「64式小銃」




過去、警視庁の特殊部隊(SAT)の前身部隊である「SAP(Special Armed Police)」では自衛隊で配備されている制式小銃の64式小銃を配備していたという元SAP隊員の証言がある。64式は装弾数20発で7.62ミリの弾丸を使う、威力のある小銃。本体はフル金属で二脚を使用した精密射撃も可能で、自衛隊では照準眼鏡を取り付けて狙撃銃に転用されるほど命中精度は良好だった。現在のところ、公開訓練で64式を持ったSAT隊員が確認されたことは無いが、装備の更新がされていなければSATでも引き続き配備されているものと思われる。

特殊部隊SATが配備する自動小銃・・・・その2「89式小銃」



こちらも主に陸上自衛隊と海上自衛隊、それに海上保安庁で配備されている公用ライフル銃。警察庁作成の資料にSAT装備品として89式が記載されていたことにより、配備が判明。64式が7.62ミリだったのに対し89式は5.56ミリ弾を使用。また、プラスチックを多用することにより64式よりも大幅に重量を軽減でき、装弾数も64式の20発から30発に増えた。また特筆すべき機能として3連発モードが標準搭載されており、指切りに頼ったバースト射撃では難しい正確に3発の銃弾を撃ち込む射撃が可能となり、警察の対テロ任務にも最適と言える。89式小銃には主に戦車隊員や空挺向けの折り畳みストック型と、一般隊員用の固定ストック型がある。

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